天子摂関御影

天子摂関御影

天皇をはじめとする三十七名を配列し描いた巻物で、もとは一巻でしたが、近年二巻に分割されました。平安時代後期から鎌倉時代に及ぶ天皇・摂関・大臣の肖像を描き連ねた画巻(絵巻)。似絵の主要作品の1つ。曼殊院門跡に伝来しましたが、明治11年(1878年)皇室に献上され、現在は宮内庁三の丸尚蔵館所蔵。像主の名は京都・曼殊院に伝来した「天子摂関御影」(宮内庁蔵)によって推定できます。全4巻。各巻ともに紙本着色で、縦幅は約29cm。天皇摂関大臣影(てんのうせっかんだいじんえい)とも呼ばれます。甲巻には鳥羽院からはじまり亀山院までの十四人の天皇を、乙巻には後宇多院・伏見院・後伏見院の三天皇および九人の僧形、さらに法性寺関白忠通より岡屋関白兼経までの十一人の摂関が描かれています。いずれも似絵独得の細線重ねがきによって面貌の下描がなされ、その上に濃彩がほどこされ、さらに墨線のかき起しがなされています。本絵巻は似絵の画系にあった為信、豪信によって製作された宮内庁本ときわめて類似した画風を示していますが、製作年代はこれより先行すると考えられます。

概要

「天子巻」「天子巻別巻」「摂関巻」「大臣巻」の4巻から成っています。主な図版としては、書陵部から出された複製本の他、『新修日本絵巻物全集26』・『続日本絵巻大成18』・『続日本の絵巻12』などの刊行本があります。4巻ともに像主はみな盛装端座して、巻首の1人がやや右向き(「天子巻別巻」のみ左向き)の他、2人目以下がこれに対するごとく左向きで描かれ、各人の左肩上には墨書で人名を注記します。背景や詞書はありません。面貌は似絵の手法を用いて表現され、装束は「天子巻」が最も多様かつ色彩に富むものの、「摂関巻」「大臣巻」では画一的となっています。像主が明記されていることから、他作品との比較基準となる作品であり、かつ肖像画を絵画史料として分析・利用する上でも恰好の材料です。「天子巻」は鳥羽院から後醍醐院までの20人、「天子巻別巻」は後光厳院の1人のみ、「摂関巻」は藤原忠通から鷹司冬教までの30人、「大臣巻」は藤原家忠から今出川兼季までの80人を描き、若干の欠があるも、凡そ200年に亘る天皇・摂関・大臣の肖像を網羅しています。

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作者・年代

為信や豪信は似絵の技能を代々継承した隆信派(祖は藤原隆信)に属する絵師ですが、それ故に家には人物を描いた粉本が大量に蓄積されていたと推定され、これらを集大成した作品である本図巻は似絵の中でも写本的な性格が強いものです。「天子巻」「摂関巻」「大臣巻」の巻末には尊円入道親王の筆と推定される奥書があり、それによると、「天子巻」は鳥羽院から後二条院までの18人が藤原為信の筆で、その注記は世尊寺行尹の筆であり、残る花園院・後醍醐院の2人と「摂関影」「大臣影」は全て豪信の筆で、その注記は奥書筆者自身が記していることが判明します。もっとも為信が早く没している(1316年以前)ことからして段階的に描き継ぎを経たと考えられ、全3巻の最終成立は貞和4年(1348年)から同6年(1350年)1月の間とみられています。後光厳院を描いた「別巻」はこれ以降の成立ですが、その作者は不詳です。

収録人物

近衛・六条・安徳・仲恭の4代を欠く理由は判然としませんが、近衛と制作当時即位した天皇として認められず治天の君としての上皇でもなかった仲恭以外の天皇については、元服前に崩御したために肖像が残されなかった可能性があります。

天子巻

在位順に配列されている。括弧内は各天皇の装束。

  • 鳥羽院(法体)
  • 崇徳院(冠直衣)この間に近衛院を欠く。
  • 後白河院(法体)
  • 二条院(御引直衣)
  • この間に六条院を欠く。かつてはここに「別巻」の後光厳院が挿入されていた。
  • 高倉院(束帯)
  • この間に安徳天皇を欠く。
  • 後鳥羽院(烏帽子直衣)
  • 土御門院(冠直衣)
  • 順徳院(冠直衣)
  • この間に仲恭天皇を欠く。
  • 後高倉院(法体) - 即位はしていないが、後堀河院の父として太上天皇号を贈られる(尊称天皇)。
  • 後堀河院(冠直衣)
  • 四条院(御引直衣)
  • 後嵯峨院(烏帽子直衣)
  • 後深草院(烏帽子直衣)
  • 亀山院(烏帽子直衣)
  • 後宇多院(烏帽子直衣)
  • 伏見院(冠直衣)
  • 後伏見院(冠直衣)
  • 後二条院(束帯)
  • 花園院(冠直衣)
  • 後醍醐院(束帯)

摂関巻

摂関(摂政か関白)の就任順に配列されていて、装束は全て束帯です。括弧内は各人名の注記。

  • 藤原忠通(法性寺関白)
  • 藤原基実(六条摂政)
  • 藤原基房(松殿関白)
  • 藤原基通(普賢寺関白)
  • 藤原師家(松殿摂政)
  • 九条兼実(後法性寺関白)
  • 九条良経(後京極摂政)
  • 近衛家実(猪隈関白)
  • 九条道家(光明峯寺関白)
  • 九条教実(洞院摂政)
  • 近衛兼経(岡屋関白)
  • 二条良実(福光園関白)
  • 一条実経(円明寺関白)
  • 鷹司兼平(照念院関白)
  • 近衛基平(深心院関白)
  • 鷹司基忠(円光院関白)
  • 九条忠家(一音院関白)
  • 一条家経(後光明峯寺摂政)
  • 二条師忠(香園院関白)
  • 近衛家基(近衛関白)
  • 九条忠教(報恩院関白)
  • 鷹司兼忠(歓喜苑摂政)
  • 二条兼基(光明照院関白)
  • 九条師教(浄土寺摂政)
  • 鷹司冬平(後照念院関白)
  • 近衛家平(岡本関白)
  • 二条道平(後光明照院関白)
  • 一条内経(芬陀利華院関白)
  • 一条房実(後一音院関白)
  • この間に余白あり、近衛経忠を欠く。
  • 鷹司冬教(後円光院関白)
日本の歴史好きな貴方へ

大臣巻

大臣(内大臣か右大臣)の就任順に配列されていて、装束は全て束帯です。

  • 藤原家忠
  • 源有仁
  • 藤原宗忠
  • 藤原頼長
  • 三条実行
  • 源雅定
  • 徳大寺実能
  • 藤原宗輔
  • 藤原伊通
  • 三条公教
  • 徳大寺公能
  • 中御門宗能
  • 大炊御門経宗
  • 平清盛
  • 花山院忠雅
  • 源雅通
  • 藤原師長
  • 平重盛
  • 平宗盛
  • 徳大寺実定
  • 九条良通
  • 三条実房
  • 花山院兼雅
  • 藤原兼房
  • 中山忠親
  • 大炊御門頼実
  • 源通親
  • 藤原隆忠
  • 西園寺実宗
  • 花山院忠経
  • 近衛道経
  • 九条良輔
  • 徳大寺公継
  • 坊門信清
  • 三条公房
  • 源実朝
  • 近衛家通
  • 久我通光
  • 西園寺公経
  • 大炊御門師経
  • 九条良平
  • 西園寺実氏
  • 土御門定通
  • 九条基家
  • 藤原実親
  • 大炊御門家嗣
  • 衣笠家良
  • 徳大寺実基
  • 堀川具実
  • 二条道良
  • 花山院定雅
  • 西園寺公相
  • 西園寺公基
  • 山階実雄
  • 三条公親
  • 大炊御門冬忠
  • 花山院通雅
  • 中院通成
  • 花山院師継
  • 久我通基
  • 堀川基具
  • 西園寺実兼
  • 大炊御門信嗣
  • 洞院公守
  • 土御門定実 - 位置不審。本来は三条実重と西園寺公衡(久我通雄)との間にあるべき。
  • 徳大寺公孝
  • 三条実重
  • この間に余白あり、久我通雄を欠く。
  • 西園寺公衡
  • 一条内実
  • この間に余白あり、一条実家を欠く。
  • 近衛経平
  • 堀川具守
  • 洞院実泰
  • 西園寺公顕
  • 三条公茂
  • 花山院家定
  • 六条有房
  • 中院通重
  • 花山院師信
  • 大炊御門冬氏
  • 今出川兼季