鳥獣人物戯画

鳥獣戯画

鳥獣戯画とは、猿・兎・蛙などの動物が擬人化して描かれた絵巻物です。一部の場面には現在の漫画に用いられている効果に類似した手法が見られることもあって、日本最古の漫画だと言われています。平安時代末期から鎌倉時代前期にかけて、鳥羽僧正覚猷(とばそうじょうかくゆう)によって描かれたといわれていますが、確かではありません。現在も京都市右京区にある高山寺を代表する宝物となっています。絵巻物の内容は当時の世相を反映して動物や人物を戯画的に描いたもので、鳴呼絵(おこえ)に始まる戯画の集大成といえます。特にウサギ・カエル・サルなどが擬人化して描かれた甲巻が有名です。

概要

甲乙丙丁4巻からなる絵巻物です。丙巻は前半が人間風俗画、後半が動物戯画、丁巻は勝負事を中心に人物を描いています。甲巻が白眉とされ、動物たちの遊戯を躍動感あふれる筆致で描かれています。甲乙巻が平安時代後期の成立、丙丁巻は鎌倉時代の制作と考えられています。

絵巻物についてもっと知りたい方必見 あなたのご希望を鹿嶋で田舎暮らし 皆幸不動産にお聞かせください。学校や勤務先に近い家、交通の便が優れた地域、緑が多くのびのびとした環境にある家、わがまま聞きます!

鳥獣戯画と擬人化

鳥獣戯画には、擬人化された様々な動物が登場します。中でも兎と蛙は多く登場します。兎はお調子者でおっちょこちょい、反対に蛙は真面目な熱血漢として描かれています。その他にも馬や牛、犬、鶏など身近な動物に始まり麒麟(きりん)や竜、獏などの空想的な動物を含めて70匹近い鳥獣が描かれています。主に擬人化された動物達が人まねをして遊ぶ様子などを描いていますが、第3巻には人間も登場し共に双六や囲碁などの賭博遊びをしています。また第4巻では全体を通して流鏑馬(やぶさめ)や葬儀など、人間社会の勝負事や行事の様子が描かれています。このように鳥獣戯画各巻の内容は全体で一貫しておらず、そのことから主題の解釈には様々な議論が沸き起こっています。一説では第1巻と第3巻は当時の仏教界に対する風刺であり、全巻を通して賭博遊びが描かれていることは俗世への風刺ではないかと言われているようです。つまり、この作者は動物が人間のように振舞う不思議な様子に、人間が住む俗な世の中から神様や仙人の住む神仙世界への憧れの思いを込めたのではないかという説があります。

鳥獣戯画と漫画

鳥獣戯画は、現代のマンガやアニメーションの祖であると言われている絵巻物です。それは、動物を擬人化したユニークな作風のためだけでなく、実際に現代のマンガやアニメーションで用いられる技法が戯画に見られるからです。例えば、マンガでは素早い動きを出すために線を何本も引き、その効果を表します。これを「効果線」と言いますが、鳥獣戯画でもこれと同じような描写を見ることができます

日本の歴史好きな貴方へ

鳥獣戯画と花鳥画

花鳥画は、中国の影響を受け平安時代に入ってから描き始められました。それまで花の美しさや鳥の愛らしさを歌った歌は多くありましたが、絵や彫刻といった形で表現されることは無かったようです。鎌倉時代には流行の兆しを見せ、狩野派や雪舟などが多くの花鳥画を描きました。桃山時代から江戸時代にかけては城の装飾画として表具に描かれました。さらに江戸時代の文治政策により、それまで高価な絵画などには縁の無かった庶民も絵画に触れる機会が増えました。そのため、花鳥画は益々盛んになりました。現在でも日本の四季を投影した花鳥画の美しさは、世界中から注目を集めています。

各巻内容

鳥獣戯画各巻の絵巻物の内容をそれぞれまとめてみました。

甲巻

様々な動物による水遊び・賭弓・相撲といった遊戯や法要・喧嘩などの場面が描かれる。描かれた萩などの植生から、秋の光景とみられます。断簡や模本から、甲巻は成立当初は2巻立て以上のそれら自体で独立した絵巻物だったと考えられ、内、少なくとも1巻は、草むらからの蛇の出現によって動物たちは遁走し、遊戯が終わりを迎えるという構成でした。現在の甲巻は、後世に遭遇した火災による焼損被害や、失われた(恐らくは何らかの形で持ち去られた)断簡による不自然さを補うための加筆が一部に見られます。

乙巻

甲巻では擬人化された動物が描かれていたのに対し、乙巻では実在・空想上の動物が写生的に描かれます。絵師たちが絵を描く際に手本とする粉本であった可能性も指摘されています。馬・牛・鷹・犬・鶏・山羊といった身の回りの動物だけでなく、豹・虎・象・獅子・麒麟・竜・獏といった海外の動物や架空の動物も含め、さまざまな動物の生態が描かれています。

丙巻

丙巻前半には人間が登場します。前半10枚は人々による遊戯を、後半10枚は甲巻の様に動物による遊戯を描いています。後半部分については、甲巻の動物の遊戯を手本に描かれたものとも言われています。前半と後半の筆致に違いがあることから、別々に描かれた絵巻を合成して1巻とした巻とみられていましたが、京都国立博物館による修復過程で元は表に人物画、裏に動物画を描いた1枚だった和紙を薄く2枚にはがし繋ぎ合わせて絵巻物に仕立て直したものだと分かりました。他巻にくらべ繊細な筆致を見せます。後半では、甲巻と同じく擬人化された動物が描かれています。19枚目の歩く蛙の絵に墨跡があり、2枚目のすごろく遊びをする人の絵と背中合わせにすると、19枚目の墨跡(烏帽子の滲み)と2枚目の人物画の烏帽子の位置と合致すると判明した後、この他にも1枚目と20枚目、3枚目と18枚目というように墨跡などが合致することが分かりました。これにより元々は10枚の人物画の裏に動物画が描かれ江戸時代に鑑賞しやすいように2枚に分けられたと推定されています。

丁巻

丁巻は、人間のみで構成され、勝負事に挑む姿が多く描かれる人々による遊戯の他、法要や宮中行事も描かれています。描線は奔放で、他の巻との筆致の違いが際立つ巻。軽妙な筆運びが特徴的です。

断簡

  • 東京国立博物館所蔵断簡
  • 益田家旧蔵断簡(実業家・茶人である益田孝が収集していました)
  • 高松家旧蔵断簡(ブルックリン美術館蔵)
  • MIHO MUSEUM所蔵断簡

模本

  • 住吉家伝来模本(江戸幕府の御用絵師だった家系に伝わっていた「兎猿遊戯中巻」)
  • 長尾家旧蔵模本(ホノルル美術館蔵):この模本にのみ見られる特徴として、サルの顔だけ朱塗りが施されています。
  • 京都国立博物館所蔵模本(狩野探幽によって模写。長尾家旧蔵模本から更に模したものとされています)